
全受賞作品とコメント2014

2013年11月〜2014年10月に出版された本から
高校生にすすめたい本を、
埼玉県の高校司書がピックアップ!
著者・編集者と高校司書のコメント
県内司書の推薦コメント
東日本大震災で壊滅的な被害を受けた日本製紙石巻工場の再生をめぐるルポルタージュです。紙を造る人がいるから本があるのだというあたりまえのことに改めて気付かされました。日本の出版を、世界の本を絶やすわけにはいかないという彼らの強い信念に胸を打たれました。この時この場所に限らず、困難な状況に陥ったとき、同じようなドラマが展開されてきたのだと思います。人間の強さに感動しました。
当たり前だと思っていたことのうしろには、多くの人の努力と想いがあることを知らされた一冊。持っているすべての本を並べてみたくなりました。
県内司書の推薦コメント
「養護施設の子ども」というだけで、同情される。善意だと思って行動しても、本人にとってみれば迷惑。そういう子どもたちの本当の思いについて考えることができる作品。有川さんのような生徒に人気のある作家がこのようなテーマを選んでくれて、うれしく思います。
施設にいる子供を通して成長する主人公というありふれているテーマです。しかし考えさせられる側面や人間同士の関わりは読みごたえがあります。
「かわいそう」で思考停止しないということを教えてくれます。
自分の思い込みに気づかされる一冊。
いろんな生徒が、いるんだなあと実感します。職業案内としてもおすすめできます。

本屋さんのダイアナ
柚木麻子 新潮社

柚木麻子先生からコメントをいただきました
選んでいただき、ありがとうございます。今は娯楽も多く、活字に向かう時間を捻出するのも、難しい時があるかもしれません。でも、活字にくるまってゴロゴロするうちに、いつの間にか自分の世界が出来てくるって楽しい経験です。これからもよろしくお願いします
県内司書の推薦コメント
「自分が少女だった頃の気持ちがよみがえるようです。いじわるだったり、生意気だったり、でも本当は淋しかったり。出会えて良かったと思える本です。
女の子必読!!胸キュンもいいけれど、将来のために視野を広くしましょう!
ダイアナと彩子、二人の少女の成長物語。大人になることが待ち遠しくなる。作者柚木麻子さんのファンになりました。
ヒロイン二人の葛藤、成長、自立や家族の愛情。対比して描かれているところがよい。じんわりとあたたかい気持ちになれた。
本を通してわかりあえることが、どんなに素敵なことか読んで感じてほしいです。
県内司書の推薦コメント
キャラクターが魅力的。人だけでなく、飛鹿・狼といった動物まで。人と人、人と動物の絆、それぞれの営みの尊さ等、各エピソードに確かな奥行きがあり、また謎の病のさまざまな要因や薬の開発につながる話は上質のミステリを読むようだった。
現実世界の話ではないのに、ものすごくリアル。物語として魅力的なだけでなく、医学の知識も学べることが、さすがだと思いました。
逃亡劇あり、医療サスペンスあり、アクションありのてんこもりですが、人物や背景がしっかり描かれているので、異世界の話が苦手でもグッと惹きこまれると思います。

わたしはマララ : 教育のために立ち上がり、タリバンに撃たれた少女
マララ・ユスフザイ, クリスティーナ・ラム 著金原瑞人, 西田佳子訳 学研

翻訳者の金原瑞人先生からコメントを頂きました
この本には、まったく異なった文化、環境で暮らす人々が描かれています。まず、その違いに驚いてください。そして、こんなに違う世界で生きる人々と心が通じ合う喜びを味わってください。それからもうひとつ、学ぶって本当は楽しいことなんだと実感してもらえたらうれしいです。
県内司書の推薦コメント
教育者の家庭に生まれ、本に囲まれて育ったマララは、教育を受ける権利を訴えたことで武装勢力から銃撃されます。教育を受けることがあたりまえの日本にいる私たちには衝撃的な事件でした。奇跡的に一命を取り止めたマララは、銃撃されて萎縮するどころかかえって強い信念を持って立ち上がるのです。2014年ノーベル平和賞を受賞した少女の、教育を受ける権利を求める戦いの記録です。
未来を生きる者として同世代の少女の主張に関心を持ってほしい。
世界のそこかしこに光っている、強い意志を感じてほしい。
県内司書の推薦コメント
アニメ製作者たちの熱いお仕事小説です。アニメに興味のない自分も、最後には登場人物たちが愛おしくなりました。愛のある仕事って最高ですね!
高校生憧れの「アニメ業界」が舞台の小説で、読んだらますます憧れる生徒が増えてしまいそうです。
アニメ業界を舞台に興味が尽きない面白さ。感動と共感があなたを包む。
アニメ業界の凄まじさを垣間見ることができました。お仕事小説としても秀逸だと思います。
県内司書の推薦コメント
同音異義語や同訓異義語など使い分けが難しいが、この本を読むと「どこがどう違うのか」が一目ですぐに、しかもよくわかる。
普段何気なく使っている言葉が、文字にするとこんな字だったんだと気づきました。写真付きでわかりやすいです。

悟浄出立
万城目学 新潮社

編集者さんからコメントを頂きました
西遊記の沙悟浄、三国志の趙雲、司馬遷の娘――中国の古典に現れる脇役を主役にしたら、どうなるか? 脇役だからこそより浮かび上がる人生のままならなさは、現代の私たちが抱える苦悩や葛藤に重なります。一歩踏み出す勇気と強さをもらえる、全5話を収録。中国史の勉強の一助とも!
県内司書の推薦コメント
これは、読み継がれるべき新しい名作だ! 国語で習う中島敦「山月記」と一緒に並べたい。
正直万城目作品は苦手でしたが、これは面白い。短篇なので次々読めて、原作を薦める上でも使える。
中国の古典を、「脇役」の視点で描き直した連作小説。漢文や中国文学、中国史の勉強をしたくなります。次の読書につながる本!
ぜひ元ネタを読んで再読してほしい。さらにその面白さがわかるはず。
県内司書の推薦コメント
ぼくのニセモノをつくるために買ってきたロボットにぼくの情報を伝える。たくさんの情報を伝えてもぼくにはなれない。とても哲学的です。
私ってなんだろうって考えた高校生に読んでほしい本です。
ひとつのものを、いろんなほうからみていくと、いろんなことがみえてくる。