全受賞作品とコメント2020
2019年11月〜2020年10月に出版された本から
高校生にすすめたい本を、
埼玉県の高校司書がピックアップ!
雲を紡ぐ
伊吹有喜 著 文藝春秋
伊吹有喜先生よりコメントをいただきました!
このたびは「イチオシ本」に選出していただき、とても光栄です。『雲を紡ぐ』は高校二年生の美緒が「自分とは何か」を探していく物語です。
本の扉を開けて、美緒の心の旅をご一緒していただけたらとても嬉しいです。
県内司書の推薦コメント
主人公も、主人公をとりまく人たちも皆悩んでいる。その悩みをゆっくりと、それぞれのペースで夢や希望に変えていく様子が実に清々しい。
好きなものって、何がきっかけで見つかるかわかりません。あせらず探してみて下さい。
学校になじめなくなった主人公を取り巻く家族再生の道のりと高級なホームスパンという織物製造の裏側が興味深い。 実在の盛岡のグルメ情報も大きな魅力のひとつ。
ゆっくりと、でも確実に自分の生きる道を見つけ成長していく主人公と、それを優しく見守る岩手の人々、そして、その姿に頑なだった心が溶かされていく両親、その全てに心がじんわりと温かくなりました。
糸は切れてもまた紡ぐことができる。家族もきちんと向き合えば、また繋がることができるのですね。本の中のおじいさんの言葉の数々に救われます。
ホームスパンをめぐる親子三代の糸の物語。
読んでいくと、主人公の美緒と同じように、盛岡の風景や丁寧につくられた毛織物に、癒されていくような物語。
自分のことが分からない、うまく気持ちを表現できないという人に読んでほしい本です。「急(せ)がなくていい」という言葉に勇気をもらいました。
一度切れてしまった糸も、またつないで紡いでいくことができる。壊れかかった家族の再生の物語です。 岩手の美しい自然や街並みが映像として目の前に広がり、盛岡を旅してみたくなりました。
手仕事をつなげることの苦労と家族のそれぞれの思いが伝わります。
なぜ僕らは働くのか
君が幸せになるために考えてほしい大切なこと
池上彰/監修 学研プラス
監修者の池上彰さんからコメントをいただきました
選んでいただき、ありがとうございます。
社会に出て働くとは、どんな意味があるのか、あなたも考えたことがあるのではないでしょうか。
働き方にはいろいろありますが、この本をきっかけに将来のことを考えてみませんか。
何かヒントがあると思いますよ。
県内司書の推薦コメント
ただ流されるまま、なんとなく進路の波に乗ってゆらゆら進むのではなく、この本を読んで、「働くということ」「働き方」について考えてみてほしい。
働くこと、生きること。将来を考える上で避けては通れない話が、とても上手くまとまっている。読んだ人の視界をそっと広げてくれるような一冊。普段本に興味がない人にも読みやすい点がなお良い。
働くとは何?生きるとは何?を考えさせてくれる本。マンガと図解でとてもわかりやすく書かれています。
働くということについて、わかりやすく、様々な視点から知ることができる。ボリュームが多いので、全部読むのは難しいが、気になるところをパラパラとめくるだけで学ぶことがある。
内容も書き方も、どこまでも中高生に向けて作られている。ぜひ頭から読んでみてほしい。大人になっても解決しないことが多くあることを知って、一緒に考えてほしい。
幸せになるために「働く」ということについて考えてみてほしい、池上さんのそんな温かいメッセージが伝わってくる。
読んでいくと、どうしても目先の“受験”にばかり目が行ってしまいそうな我が校の生徒さん。でも、ゴールはそこじゃない!自分は何がしたいのか、自分は何ができるのか。1歩先に踏み込んだ自分の姿を考えさせてくれる1冊です。の美緒と同じように、盛岡の風景や丁寧につくられた毛織物に、癒されていくような物語。
「働くこと」は「生きること」。将来働く仕事について考えることは、自分の人生と向き合うことです。この途方もない「問い」に対して自分なりの「正解」を導き出さなければいけない時、この本が大いに力になってくれると思います。
カラー、マンガで非常に見やすい。読後、何かしら伝わるものがあると思う。進路に悩む高校生にこそ読んでほしい1冊。
水を縫う
寺地はるな/著 集英社
作者の寺地はるな先生からコメントをいただきました
やりたいことがあってもなくても、生きていくのは大変で、でも同時に楽しいことでもあります。
ときに勢いよく、ときに静かに、流れる水のように淀まずに生きる人びとの物語です。
県内司書の推薦コメント
「男らしさ」「女らしさ」「普通の家族」などといった言葉にとらわれず、自分らしく生きていいんだと思えるあたたかい作品です。
世の中の「普通」と折り合いがつかなかったり窮屈だと思う自分に気づいて、そして踏み越えていく登場人物たち。透き通った深呼吸をしたような読後感。
刺繍が好きな男の子の家族の物語。離婚して働くお母さんに共感。
これは周りにあるぼんやりとした抑圧からの解放と、気持ちを伝える努力・わかってもらおうとする努力についてまとめた小説。理解されないからといって説明する前に諦めてはいませんか?自分の気持ちをなかなか伝えられない人や、自分は周りと違うのかもしれないと思っている人にこそ読んでほしい。
女らしさや男らしさといった、世間の決めた「らしさ」を少しでも感じた事のある人におすすめしたい本。見え辛い柔らかな想いに溢れていて、優しい気持ちになれます。
逆ソクラテス
伊坂幸太郎/著 集英社
作者の伊坂幸太郎先生からコメントをいただきました
イチオシ本に選んでもらえて、とても嬉しいです!!
この本の登場人物の多くは小学生なのですが、だからといって小学生向けではなく、どちらかといえば大人に、というよりもさまざまな人たちに向けて書いたような小説です。
読んで楽しんでもらえますように。
県内司書の推薦コメント
5つの短編小説ですべてが子供が主人公。学校も子供が主人公。 自分の学生時代を振り返り思いおこさせて、酸っぱい気持ちにさせられる。
一位間違いなしです。
視野の狭さから生まれる先入観を、子どもたちが引っくり返していきます。爽快で、勇気をもらえる作品です!
おとめ六法
上谷さくら・岸本学/著 Caho/イラスト 集英社
作者の上谷さくら先生からコメントをいただきました
法律は、難しくてとっつきにくい?
でも、法律は、知っている人しか守ってくれません。
学校生活や恋愛、SNSに関することも、多くの法律が関係しています。
自分や大切な人を守るために、ぜひ読んでみてください!
県内司書の推薦コメント
女性が特に困ることが多い事例をあげ、法律や相談先などを元にしたアドバイスが書いてあります。今までありそうでなかった、実用的な本です。とにかくイラストがかわいいので、それだけでも本棚に置きたくなります。
やわらかく優しいタッチでかわいらしい。女の子は自分の身を守るためにもちろん読んでほしい。男の子も、こんなことが女の子には起こるかもしれないんだという危機感を学ぶためにも読んでみてほしい。
女性のための味方になる法律の本。
「女性」が生きていくうえで直面するさまざまなトラブル。個人で飲み込まず、きちんとした対処法があることを学びましょう。
女の子だけでなく、男の子にも読んでほしい一冊。
法律の本って、難しく手に取りにくいけどこの本なら。
女の子が生きていくために寄り添えるような、困った時に頼れる法律をかわいいイラストと共にわかりやすく教えてくれます。
法律の本って、難しく手女子の必読書では?
晴れ、時々くらげを呼ぶ
鯨井あめ/著 講談社
作者の鯨井あめ先生からコメントをいただきました
世界は私たちの手が届かないところで常に牙を剥いている。
私たちは弱いから、たくさんの理不尽に揉まれ、大切なものを見失い、意味もなく泣きたくなる。
そんな日々のなかで、この本が「ちょっとだけ優しくなろう」と思えるきっかけになれたら嬉しいです。
県内司書の推薦コメント
無力感にさいなまれる状況でも、人と手を携えれば何かを変えられるかも、と励ましてくれる一冊。クラスや部活を超えて仲間とつながりあえる学校図書館の雰囲気も素敵。
閉塞感を抱えた高校生たちの物語。きっと共感するところも多いはず。 主人公たちは図書委員で、本についてたくさん語り合っているところも好ポイントです。
わたしの美しい庭
凪良ゆう/著 ポプラ社
作者の凪良ゆう先生からコメントをいただきました
高校生にすすめたい本に選んでいただきありがとうございます。
これはひとりひとりが心に持つ庭の物語です。
あなたが大事に造っている美しい庭を土足で踏み荒らされることがないように、またその逆もないように。
奪うのでなく守るための強さを持てるように。
この本がその手がかりになれれば嬉しいです。
県内司書の推薦コメント
マイノリティをごくふつうに描いている。さりげなく、優しいお話。
血縁関係がなくても信頼しあって一緒に暮らし、日々を楽しく暮らすことが大切。それが生きる力になる。
憶測で判断し、無意識に他人にレッテルを貼りがちな現代社会。「そういう誰かの『かいしゃく』とは関係なく、わたしは楽しく暮らしている」という台詞が胸に沁みる。何かをしてあげるプラスの優しさだけでなく、何もしないという優しさもあることを、高校生に知ってほしい。
とても優しい物語です。生きづらさを抱える人に、寄り添ってくれる1冊になると思います。
本屋大賞となった『流浪の月』が有名な著者ですが、こちらも読んでほしい作品です。読む人も救われる気持ちになれる物語だと思います。
仕事本
わたしたちの緊急事態日記
左右社編集部/編 左右社
左右社編集部さんからコメントをいただきました
たくさんのご推薦ありがとうございます。
コロナ禍の記録としてはもちろん、この世には数えきれないほどの仕事があり、それはすべて誰かの生活につながっているという不思議を味わっていただけたら嬉しいです。
県内司書の推薦コメント
2020年4月を多様な視点から振り返ることができる。
仕事の本質は、非常事態の時にこそ、どう行動するかが試される。就職する生徒はぜひ手に取ってほしい。常にどう行動するのが一番最善か、考え続けられる大人になってほしい。
ニュースなどには取り上げられないふつうの人々が、緊急事態中どんな思いで過ごしていたのかを知っていてほしい。
さまざまな仕事でコロナ対策がどうなっているのか、が日記風に書かれていました。就職する生徒もいるので、ぜひ知っておいてほしいと思い、選びました。
2020年春。コロナによる緊急事態宣言によって、私たちは不要不急の外出を制限されました。その期間、人によっては仕事を休んだり、テレワークで対応したり、エッセンシャルワーカーとして仕事をし続けたりしました。仕事の価値とは、仕事をする意味とは、仕事について考えるきっかけになります。
緊急事態宣言が出された4月に77人の異なる職業の人たちが書いた日記。77人分の思いがコロナ元年をリアルに映し出している。
10代から知っておきたい
あなたを閉じこめる
「ずるい言葉」
森山至貴/著 WAVE出版
作者の森山至貴先生からコメントをいただきました
「ずるい言葉」に閉じこめられた10代の私にとって、もっとも自由を感じられる場所は図書室でした。
だから、この本を司書の先生に評価していただき、とてもうれしいです。
子どもたちが図書室でこの本に出会い少しでも救われることを願っています。
ありがとうございました。
県内司書の推薦コメント
無自覚のうちに「被害者」に、そして「加害者」にならないようにするために知っておきたい言葉の数々。無意識に口に出してしまう言葉の裏に秘められた悪意についハッとなります。
高校生には大人の「ずるい言葉」に負けないでほしいし、大人は誠実にならなくては。
自分の心が変わると世界が違って見えることがあります。心をしばっているのは、もしかしたら、自分や誰かの言葉かもしれません。誰かの言葉に心が閉じこめられたときに、抜け出し方を教えてくれる本だと思います。
子どもが言われがちなもやもやする言葉。どうしてなのかを解説してくれています。解説されないとそのまま飲み込んでしまう子が多いのでは。
この本は一人で読むだけじゃなくて、周りのお友達ともどんなふうに思うか、話し合ってみてほしい。道徳の授業をするならこういう内容をやってほしい。
夜明けのすべて
瀬尾まいこ/著 水鈴社
作者の瀬尾まいこ先生からコメントをいただきました
イチオシ本に選んでいただき、ありがとうございます。
ちょっと疲れたとき、なんだかうまくいかないとき、読んでいただけたらなと思います。
少しほっとして、明日が待ち遠しい。
そんな気持ちになっていただけたらうれしいです。
瀬尾まいこ
県内司書の推薦コメント
描いていた理想からは落伍した男女が、何も期待していなかった職場で、なれ合わず本音で生きてゆく様が心地良く、ページをめくる手が止まりません。
パニック障害、PMS(月経前症候群)という生きづらさを抱えた2人の物語です。普段は気にしないけれど、私たちのまわりにはたくさんの優しさや思いやりがあふれているのかもしれないなと、希望を感じる小説です。